日商簿記1級経理マンのテツオです。
人気のロボアドバイザーサービス、ウェルスナビ。
2020年にマザーズに上場を果たし、株価も上昇中と飛ぶ鳥を落とす勢いですが、ウェルスナビ株式会社そのものの利益は赤字です。
2020年は営業利益▲9.8億円と、2019年の▲20.6億円と比べると大幅に改善はしましたが、売上25.2億円に対して営業利益率▲38.9%と、赤字幅はまだまだ大きいです。
会社自体は儲かっていないものの、実はその裏では儲けている関係者も多く、今回はウェルスナビの2020年決算を見ながら「ウェルスナビで儲けたのは誰か?」を分析していきたいと思います。
※本記事ではウェルスナビ株式会社の2020年決算有価証券報告書を参照しながら分析を行います。
ウェルスナビ株式会社 儲かってません
冒頭で述べた通り、ウェルスナビ株式会社は儲かっていません。
創業以来常に赤字で、株主からの出資を損失補填にあてて事業継続しています。
この辺りは過去記事にも記載しているので、良かったらご覧ください。
構造的には自転車操業に近く、広告宣伝費を大量に使ってユーザーを集め、ユーザーから徴収した手数料を次のユーザー獲得の広告宣伝費に使うという流れです。
損益計算書を見ると一目瞭然ですが、費用の中で最も大きいのが取引関係費(広告宣伝費等の集客コスト)。
2019年は売上15億円に対して取引関係費が22億円と、集客コストが売上を上回っている状況で、これでは当然黒字にはなりませんね。(2020年は改善)
そして、気になる取引関係費の内訳ですが、広告宣伝費と支払手数料が大部分を占めています。
広告宣伝費はテレビやWebの広告でしょう。テレビCMを一時期よく見ましたね。
ただ2020年はCMを抑えたのか、広告宣伝費が対前年▲4.5億円となっています。
一方支払手数料は対前年+1.9億円の増となっております。
この支払手数料が曲者で、広告サイトやアフィリエイターに支払う成功報酬費がメインと想定しています。
CMは意図的に抑えられても、アフィリエイターへの成功報酬を減らすとブログで何書かれるか分かりませんから、支払手数料は抑えられなかったのでしょう。
この、次のユーザーの集客のために現在のユーザーの手数料の大部分をつぎ込む事業構造が私が自転車操業と考える理由です。
しかし、事業規模の拡大により売上は着実に伸びており、現在のペースで売上拡大が進めば、広告宣伝費をある程度抑えることを前提ですが、今後2~3年で黒字化が視野に入っています。
そんな(現時点では)儲かっていないウェルスナビ株式会社ですが、実は会社(法人)以外は儲けている人ばかり。
ウェルスナビの株主も、ユーザーも、アフィリエイターも全員儲かっています。
なぜか三方良しの状況となっていますが、そのカラクリを解説します。
株主(機関投資家、個人投資家) 儲かってます
まず、株主は機関投資家、個人投資家を問わず、多くの方が儲かってます。
これは上場以来のウェルスナビの株価チャートですが、12/22の始値1,725円で5/14の終値が3,630円と、2倍以上伸びています。
直近の株価は下げ傾向なので、損した人は0ではないでしょうが、上場以来の伸び率を踏まえると多くの投資家が儲かっていると考えられます。
また大株主の儲けはそれ以上で、例えば所有株式数2位のSBIホールディングスは上場前からウェルスナビに出資しており、株式分割を経て取得単価は500円程度まで落ちていると推測されます。(有価証券報告書P42~45 発行済株式総数、資本金等の推移より)
SBIホールディングスのウェルスナビ株保有数は約3百万株なので、単純計算で約90億円以上の評価益が発生していることになります。
実際、SBIホールディングスの2020年度決算では、アセットマネジメント事業の収益・利益が共に過去最高で、ウェルスナビもその一因となっているようです。
ただし、ウェルスナビが倒産や上場出来ないリスクを負ってでも赤字補填の出資を続けた成果なので、リスク相応のリターンかなと思います。
ウェルスナビのユーザー 儲かってます
では続いてウェルスナビのユーザーは儲かっているのか?
こちらも直近の円安株高の恩恵に与り、儲かっている(含み益)の人が多いと思われます。
ウェルスナビのポートフォリオ(リスク許容度5)で一番大きいのはVTIですが、円換算、配当込みである楽天VTIのチャートを見ると、コロナショック前の水準に回復し、そこから更に力強く伸びていることが分かります。
同じくポートフォリオ上位のVEAやVWOもコロナショックから回復してどんどん伸びているので、ユーザーの大部分は儲かっている(含み益)と思われます。
ただし、自分でVTIやVEAを買っている人に比べるとリターンはウェルスナビの手数料1%分落ちているので、そういう意味では儲かってないかもしれません。
比較軸をどこに置くかで結果は変わってきますね。
マスコミ、広告代理店、アフィリエイターなど 儲かってます
最後にマスコミ、広告代理店、アフィリエイターなどです。
先に見た通り、ウェルスナビは取引関係費に大きなコストをつぎ込んでいます。
マスコミや広告代理店は2019年より減ったとはいえ、11億円の収入があります。(広告宣伝費)
また広告サイトやアフィリエイターは7.4億円の収入があります。(支払手数料)
支払手数料は年々増加傾向にあり、アフィリエイター全体の収入も伸び続けているということですね。
自らは運用リスクを負わず、紹介や広告だけでこれだけ稼いでいるのは正直言って美味しい商売ですね。
まとめ ウェルスナビで儲かったのは誰?
- ウェルスナビ株式会社(法人)
- 投資家(機関投資家、個人投資家)
- ウェルスナビユーザー
- マスコミ、広告代理店、アフィリエイター
まとめてみたら、ウェルスナビ株式会社(法人)以外は全ての関係者が儲かる、まさかの三方良しの結果となりました。
ETF等を自動売買するサービスに値段(株価)が付き、ETFと自社株両方の値上がりにより損する人が誰もいない、正に金融業のマジックとも言うべきでしょうか。
ただし、これは相場が良い要因も大きいです。
ユーザーはVTIやVEAの株価変動リスクを負ってますし、投資家はウェルスナビ株式会社そのものの株価変動リスクを負っています。
特に後者はマザーズ市場で株価の変動も大きいです。
相場が悪くなれば一気に儲かっていない側に変わるでしょう。
一方マスコミ、広告代理店、アフィリエイターは株価変動リスクを負わずに安定して儲けています。
しかも原資はユーザーから集めた手数料です。
私はウェルスナビの自動売買の仕組み自体は嫌いではないですが、この歪んだ構図(ユーザーから集めた手数料がユーザー還元ではなくバラマキに使われる)が好きではなく、ウェルスナビのサービスを自分では使おうと思いません。
ウェルスナビを利用しようとする方は、是非この構図を理解いただき、それでも尚、ウェルスナビの自動売買システムにメリットがあると感じた場合に、利用してみて下さい。
本日は以上となります。ありがとうございました。
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