日商簿記1級経理マンのテツオです。
先日、ウェルスナビが資本金の大幅減資を発表しました。21億円あった資本金を一気に1億円まで減らします。
約95%の削減ですが、ウェルスナビに一体何があったのか?ロボアドバイザー事業への影響はあるのか?
決算情報から読み取れる内容をまとめてみました。
資本金を削減すると何が起こるの?
まず、ウェルスナビの減資発表原文がこちらです。
非常に淡泊で、ただ減資をすることの事実しか述べられておりません。
しかしそれで終わらせないのが経理マン、この発表から読み解けることはいくつもあります!
まず、減資の方法は有償減資(配当金を伴う場合)と無償源資(配当金を伴わない場合)がありますが、今回は無償源資の様子。
無償減資の目的は大きく2つ。
②資本金を減少させて過去の欠損金(赤字)を補填
今回はおそらく②のパターン、ウェルスナビの累計赤字25億円の補填に使用されると思われます。
それに加えて、資本金を1億円にすることで、税法上の中小企業として扱われ、税金上の優遇を受けることが目的と思われます。
ここで驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ウェルスナビ、実は累計25億円の大赤字なんですね。(私も今回調べて始めて知りました)
※参考資料:2018年度決算 ウェルスナビ公式HP
赤字状態でウェルスナビのロボアドバイザー事業は継続出来るのか?
少し考察してみました。
累計赤字25億円のロボアドバイザー事業の継続性は?
結論から言うと、「少し怪しいかも」という感じです。
同じ赤字企業でもマネーフォワードと違って高コスト体質であること、財務基盤が盤石ではないことから、太鼓判を押すことは残念ながら出来ません。。。
高コスト体質
ウェルスナビの2018年度決算は、売上8億円、費用25億円、営業利益▲17億円(赤字)です。
売上の3倍以上の費用を使っています。そして、その9割以上が販売費・一般管理費。
内訳を見てみると、「取引関係費」という謎の勘定科目で15億円の支出がありました。
取引関係費って何?
テレビCM等の広告宣伝費、そして広告サイトやアフィリエイターにばら撒く成果報酬費がメインでしょう。
ウェルスナビは事業拡大のために売上の2倍以上の費用を広告に使用しているのです。
これが私がウェルスナビを「高コスト体質」と考える理由です。
テレビCMは辞めれば済む話ですが、アフィリエイターへの成果報酬費を減らすとブログで何書かれるか分かりませんから、成果報酬費は減らし辛いのではないでしょうか。
財務基盤が盤石ではないこと
ウェルスナビの預かり資産が1800億円を突破したようです。(2019年10月時点)
手数料(売上)が預かり資産の1%なので、期中平均の預かり資産額を考慮すると、今年度の売上は12~15億円程度でしょうか。
前年度費用が25億円のため、今年度も赤字になることがほぼ決まっているようなものですが、それに加えて現預金の残高が14億円と、少し心もとないのが現状です。
同様に赤字企業のマネーフォワードは増資で運転資金を確保し、ビジネス分野で個人の課金に頼らない事業拡大が見込めます。
しかし、ウェルスナビの場合は運転資金が十全ではなく、収入元が個人投資家向けロボアドバイザー1本と、バラマキを続けながら黒字化するにはどれだけの人がこのサービスを利用すれば良いのか、正直想像が付きません。
何か安心材料はないの?
そんな中でも安心材料はあります。
証券会社は金融商品取引法により、財務の健全性を測る指標として「自己資本規制比率」の開示が義務付けられています。
これは、リスク相当額に対して、どのくらいの自己資本を持っているかを表すもので、法律により120%の維持義務が課せられています。
ウェルスナビの自己資本規制比率は19年9月末時点で550%となっており、この数字上は問題がありません。
ただし、やはり本業で黒字にならないと事業の継続性は困難であるため、早期黒字化は同社の喫緊の課題であると思われます。
ウェルスナビが破綻した場合、投資額は戻って来ないの?
投資家保護の仕組みがあるため、投資額が返金されないということは原則ないようです。
ただし、その後の運用は当然出来なくなるため、長期運用で資産形成を目標としている場合には、別の投資先を探す必要性が生じます。
なので、ウェルスナビを始める場合は、ウェルスナビそのもののサービス継続リスクを考慮に入れる必要があると思います。
中小企業向けの減税措置とは?
さて、ウェルスナビが減資をしたもう1つの理由を考察したいと思います。
資本金を1億円にすることで、税法上、中小企業として扱われ、各種優遇措置を受けることが出来ます。
■優遇措置の一例(簡略化して記載しています)
難しいことを色々述べましたが、要は中小企業になると「合法的な節税」が出来るということです。
これを悪用して中小企業として扱われるようにする大企業も存在するようですが、同社はベンチャー企業。中小企業という区分で全く問題はないと思います。
まあ節税しようにも課税される利益がないので(笑)、直ちに何か影響があるということはないでしょうが、欠損金を補填しつつ税制優遇を受ける、経営陣の戦略性は垣間見えますね。
終わりに
本日はウェルスナビの減資から見える同社のサービス継続性について書きました。
「少し怪しいかも」と記載はしましたが、私自身はウェルスナビには頑張って欲しいと思っています。
手数料が高いので私は使用しませんが、ウェルスナビは投資未経験者の入口としての役割も担っています。
仮にこのサービスが破綻したら日本の投資環境への影響は計り知れません。
「やはり投資はギャンブル」「ロボットに資産を預けるのは危険」「貯蓄が最高」「投資する余裕がない、政治家が悪い」のような完全に的外れな意見が太宗を占めるのが目に見えています。
つみたてNISAなどで環境が整い、金融庁の年金2000万円不足問題などで「貯蓄から投資へ」の流れが出来つつある中、それに大いなる冷や水を浴びせるような事態にならないことを祈っています。
ありがとうございました。
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