日商簿記1級経理マンのテツオです。
野村証券が信託報酬0%のトンデモ投資信託を発表しました。
その名を「野村スリーゼロ 先進国株式投信」。
委託会社報酬、販売会社報酬、受託会社報酬の全てが0%ということでスリーゼロと名付けているようです。
低コスト化ここに極まりといったところですが、よくよく見てみると落とし穴もありそうなので、注意点をまとめました。
また、業界最低水準のコストの代名詞であるeMAXISスリムの対抗策も予想しましたので、この投資信託を購入する人は是非参考にして下さい。
野村スリーゼロ 先進国株式投信 基本情報
野村スリーゼロの基本情報を記載します。(公式パンフレットより)
項目 | 内容 |
設定日 | 2020年3月16日 |
決算日 | 年1回(12月20日) |
連動指数 | MSCIコクサイインデックス |
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | なし(2030年末まで) 税抜0.1%(2031年から) |
信託財産留保額 | なし |
その他の費用 | 株式売買委託手数料 外貨建資産の保管費用 監査費用 租税費用 |
販売会社 | 野村証券 |
購入方法 | 野村証券オンラインサービス |
つみたてNISA | 対象 |
MSCIコクサイインデックスに連動するインデックスファンドで、信託報酬0%が最大の売りの投資信託です。
コスト率は当然MSCIコクサイインデックス型で最低で、つみたてNISAの対象なので20年間は税金も0円。
現時点ではコスト面で最強の投資信託ですが、投資家はしっかり中身を見定める必要があると思います。
信託報酬を取らないということはボランティアでやりますと言っているのと同じですからね。
事情会社が普通そんなことはしないでしょう。
パンフレットを見る限り、いくつか注意点があったので以下に記載します。
野村スリーゼロ 注意点
運用が安定して行われるか不明
MSCIコクサイインデックス連動型といっても、投資信託の基準価格の推移が本当に連動するかは運用会社である野村アセットマネジメントの腕次第です。
まあ天下の野村様なので大丈夫だとは思いますが、人気投資信託である楽天VTIもベンチマーク乖離率が▲2%以上あります(設定来)。
現物保有とETF保有の差はあれど、野村スリーゼロの運用が安定して行われるかは注視が必要と考えます。
実質コストが不明
信託報酬こそ0%ですが、それ以外にも色々なコストが掛かります。
パンフレットにも記載がありますね。
(公式パンフレットより)
もちろんこれは他の投資信託でも掛かるコストですが、特に第1期はこのコストが不明確。
実質コストが開示されたら意外と高かった、ということも無きにしも非ずなので、注意が必要です。
2031年からは信託報酬0.1%(税抜)
野村スリーゼロが信託報酬0%なのは2020年~2030年の10年間で、2031年からは0.1%の信託報酬が掛かります。
対抗ファンドのeMAXISスリム先進国株式は税抜で0.0899~0.093%なので、2031年以降を単純比較するとスリム先進国の方が安いです。
積立を行っていくと年数経過に応じて雪だるま式に信託報酬も膨らんでいくので、長期投資ではスリム先進国の方がコストが安くなる可能性があります。(詳細は後述します。)
販売会社が野村証券のみ
これは割と大きなポイントだと思います。
販売会社が野村証券のみということは楽天証券で購入が出来ないということです。
つまり、楽天カード決済による1%のポイント還元を受けられないということです。
単利ではありますが、ポイント再投資が出来ないことによる長期運用のパフォーマンス差は大きいです。
以下にシミュレーションしてみました。
■シミュレーション条件
- 野村スリーゼロを野村証券で購入
- eMAXISスリム先進国株式を楽天証券で購入(楽天ポイント再投資)
投資額は年60万円。騰落率は毎年4%で、信託報酬以外のコストは掛からないものとします。(シミュレーションの簡素化のため)
シミュレーションの結果、ポイント再投資をしたスリム先進国株式の方がパフォーマンスは上であることが分かりました。
楽天証券のポイント1%付与がどれだけチートなのか良く分かるシミュレーションですね。
信託報酬0%だからといって安易に飛び付かない方が良い場合もあるということですね。
また、野村証券のオンラインサービス上で、営業マンを介さずに購入が出来るようですが、それをドアノックツールとして別の金融商品を営業される可能性もあるので、別のボッタクリ投資信託を掴まないよう、その点でも注意が必要ですね。
eMAXISスリム先進国株式の対抗策予想
野村スリーゼロが発表された2月25日、eMAXISスリム先進国株式が信託報酬の値下げを発表しました。
これは野村スリーゼロに対抗したものでなく、ライバル投資信託であるニッセイ外国株式インデックスファンドの値下げに対抗したものです。
公式リリースによると、以下の通り値下げになります。
eMAXISスリムシリーズは「業界最低水準のコストを、将来に渡って目指し続ける」素晴らしいコンセプトの投資信託ですが、野村スリーゼロに対抗して信託報酬0%とは流石に出来ないでしょう。
事業会社として利益を捨てることは通常有り得ない話だからです。
ではどのような対抗策を取るのか?
2つ予想してみました。
運用の安定感をアピール
eMAXISスリム先進国株式はベンチマーク乖離率が設定来で+0.6%。
非常に安定したパフォーマンスを続ける優良投資信託であり、eMAXISスリムシリーズの主力商品の1つとなっています。
この安定したパフォーマンスを上げ続けた実績をアピールする。
これが1つの対抗策となるのではないでしょうか。
対抗値下げを行う
野村スリーゼロが信託報酬0%なのは当初10年間です。
なので、20年間の長期運用で見た時にトータルでのコストが安くなるよう対抗値下げを行うのではないか、予想をしました。
先ほどのシミュレーションで楽天ポイント再投資をせずに、eMAXISスリム先進国株式が値下げを行ったものがこちらです。
信託報酬を0.07%以下にすると20年間のトータルリターンが同一になることが分かりました。
業界最低水準のコストを維持し続けるスリムシリーズといえども信託報酬0.07%は少し難しい気もしますが、運用期間を25年・30年と伸ばせば必要な値下げ幅は更に少なくなります。
なので若干変則的ながら、このような形で対抗値下げを行うのではないかと予測します。
スリム先進国株式がどのような対抗策を打つのか、今から楽しみです。
おわりに
本日は鮮烈デビューを果たした野村スリーゼロの注意点の解説とeMAXISスリム先進国株式の対抗策の予想でした。
野村スリーゼロを検討されている方は是非参考にして下さい。
ありがとうございました。
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