日商簿記1級経理マンのテツオです。
今週末に日商簿記検定の試験日が控えておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
受験される方は最後の追い込みに入っているでしょうか。
さて、今回は「簿記は大事だが役に立つ?」ということで、簿記がどのような場面に役に立つか、特に家計管理と資産運用にスポットを当ててお話したいと思います。
長文になってしまったので、結論を先に知りたい方は「まとめ」からお読み下さい。
簿記検定 概要
簿記検定は日商簿記と全商簿記の2種類存在し、日商簿記は大学生や社会人など一般向け、全商簿記は高校生向けで、難易度は日商簿記が上です。
簿記検定の趣旨は、業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」となる資格。
※日商簿記検定公式HPより
個人的には、社会人の義務工程として新入社員研修で必須の項目にして欲しい位なのですが、借方、貸方、勘定科目など独自の用語が多く、数字が苦手という人から特に敬遠されている印象です。
そんな簿記、どのような方に役立つのでしょうか?
日商簿記検定公式HPから抜粋すると以下の通り。
ここで違和感を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自分ほとんど該当しなくない?と。
そうです、3級ならともかく、難易度爆上げした2級以上に関しては、企業の経理担当やコスト管理者、公認会計士などより上の資格を目指す人にしかコスト・労力に見合う効果はないと思います。
ではそんな簿記ですが、家計改善や資産運用に役に立つのか、日商簿記1級の私の実感を伝えていきたいと思います。
結論
結論を先に述べます。
- 家計改善や投資において、簿記を学ぶメリットは0ではないが、効果はかなり限定される
- 他の資格(ビジネス会計検定試験やFP)の方が優先度は高い
簿記を勉強する方のモチベーションを下げるような結論ですが、簿記は企業の財務諸表を作成するためのものであり、個人が自分のために活用するには効果は限られます。
家計改善や資産運用を目的にするのであれば、簿記を勉強するよりも「投資の勉強をすること」「マネーリテラシーを高めること」「固定費を削減すること」が優先だと考えます。
簿記を勉強するより、格安SIMに変えるとか、不要な保険を解約するとかの方がよっぽど家計改善に役立ちますし、マネーリテラシーを高めるなら簿記ではなくFPの勉強をすべきだと思います。
簿記がマネーリテラシーを高めるものではないというのはロイヤルロンドン投資という大地雷を踏みぬいた私が身をもって証明しているのではないでしょうか(苦笑)
では、効果は限定的ながら、簿記が家計改善・資産運用においてどのような場面で役に立つのか、以下で説明します。
家計簿・家計改善編
まずは家計簿・家計改善編。
家計簿を付けるだけならマネーフォワードのような家計簿アプリがあれば十分ですし、家計改善を行うなら簿記の勉強ではなく固定費の削減に取り組みべきです。
なので、私は「資産の裏に負債があることを理解出来るようになる」、これが最も大きい効果だと考えます。
例えば、よく「マイホームは資産」と言われますが、多くの人は住宅ローン(という名の借金)を組んで購入します。
住宅ローン自体は超低金利で借り入れ可能で、社会人の信用を活かしてかなりのレバレッジを利かすことが出来るので、部類としては「良い借金」であると思います。
しかし、資産性だけに着目して、家賃と同程度のローン支払額になるからとマイホームを購入すると痛い目を見る可能性があります。
マイホームが本当に資産になるのは、ローンの支払いを完了した後です。
資産の裏に同額の負債(ローン)を抱えているからです。
仕訳にするとこんな感じですね。
そして、日本の多くの住宅はローン残高より資産価値の方が先に目減りしていく。(新築は鍵を開けた瞬間資産価値が2~3割目減りすると言われています。)
そのような家は資産ではなく金食い虫の負債になってしまいます。
※数年後の時価評価。資産と負債のバランスが崩れ、負債の方が多い状態
資産の裏には負債が存在することを意識して、家庭の運命を左右するような大きな決断をする際のサポートが出来ること、これが家計管理における簿記の役割であると考えます。
投資・資産運用編
簿記が投資や資産運用にどのように役立つのか。
「企業の財務諸表を読み解けるようになる」、この1点に尽きると思います。
簿記を勉強することで財務諸表の作り方が分かるようになるので、上場会社の公開されている財務諸表を見て、それが意味する所を理解出来ます。
以前マネーフォワード社の分析記事を書きましたが、同社の財務諸表を読むだけで、
- 赤字企業だが、倒産の危険性は低いこと
- 売上何億円で黒字になるか
社外の人間でもこの程度は分かるようになります。
個別株で資産運用する場合は企業の財務諸表を読むことは必須なので、ある意味必須のスキルとも言えます。
ただし、投資をするのなら簿記以外にも勉強は必要ですし、私も行っているインデックス投資の場合は個社の財務諸表を読む必要性は低いので、簿記の優先度は下がります。
財務諸表の分析スキルを上げるだけならば、ビジネス会計検定試験というものもあるので、選択肢は簿記だけではありません。
なので、投資・資産運用に関して、簿記は、「必要条件は満たすが、十分条件は満たさない」といったところでしょうか。
簿記はどんな人に役に立つ?
ここまで簿記取得のモチベーションを下げるようなことを言ってきましたが、では簿記はどのような人に役に立つのか。
私のような、「企業の経理・会計担当者」を目指す人です。
学生でも社会人でも、簿記を保持していることは経理・会計担当を目指す上で大きな強みになります。(それ以外にコミュニケーション能力などのヒューマンスキルも必要ですが。)
私は簿記1級を取得することで人生が開けました。
入社時点では経理ではなかったのですが、途中から、将来的には経理をしたいという想いを抱くようになりました。
そして、経理を希望することを繰り返し人事に伝えたこと、その熱意を日商簿記1級という形で具現化したこと、それにより経理への道が開けました。
私のことを歯牙にもかけていなかった人事も、「これだけ熱意があるならやらせてやるか」と異動の決め手になったと聞きました。
正直異動前は転職も考えていたのですが、今では本当に楽しく仕事が出来ています。
なので、「企業の経理・会計担当者」を目指す人には是非とも取得していただきたい資格です。
難易度は上がっていますが、労力に見合う効果は絶対にありますよ!!
まとめ
- 家計改善や投資において、簿記を学ぶメリットは0ではないが、効果はかなり限定される
- 他の資格(ビジネス会計検定試験やFP)の方が優先度は高い
- 家計管理におけるメリットは、資産の裏に負債があることを認識し、マイホーム購入等の大きな決断をする際の手助けとなること
- 投資におけるメリットは、個社の財務諸表分析能力が向上し、投資判断の一助となること
- 「企業の経理・会計担当」を目指す人には是非取得していただきたい
「簿記は大事だが役に立つ?」、日商簿記1級を取得した私の実感は以上となります。
ありがとうございました。
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