日商簿記1級経理マンのテツオです。
突然ですが、あなたは持家派ですか?それとも賃貸派ですか?
私はどちらかというと持家派です。
それぞれ一長一短あり、一概にどちらが良いとは言い切れないのですが、持家派の主張の1つが「家は資産になる」というもの。
それは本当でしょうか?
持家は資産か、それとも負債か。
日商簿記1級経理マンが仕訳を使って考えてみました。
持家に関する仕訳
持家に関する仕訳を、住宅取得時~売却時まで、仕訳を使って解説します。
ここではマンションではなく一軒家を例に取って考えます。
単位は全て「万円」で統一しています。
①借入金(住宅ローン)
まずは住宅ローン借入の仕訳。
例を簡単にするために5,000万円のフルローンにしています。
ハウスメーカーへの支払いに先立ち、銀行から借入金の入金が行われます。
②住居取得時
続いて住居取得時の仕訳。
銀行から借りた5,000万円を使用して建物3,500万円と土地1,500万円を支払います。
金額は仮ですが、関東圏で大手ハウスメーカーで建てる場合、最低これ位の金額になるので、相場としてこの程度とご認識下さい。
③住居取得後の貸借対照表
住居取得後の家計に残る資産・負債の金額は上記の通り。
土地建物5,000万円に対して借入金5,000万円が残っている状態です。
④月々のローン返済仕訳
こちらは月々のローン返済仕訳です。
元利均等方式を選んだ場合、月々の現金支出額は一定ですが、序盤は返済額に占める金利の金額が大きいです。
借入金5,000万円で年利1%の35年ローンの場合、毎月14万円を支払いますが、初月の元本返済額は10万円、利息で4万円です。
年利1%でも意外と高いですよね?
だから金利には絶対に拘るべきなのです。
⑤建物の減価償却費仕訳
続いて建物の減価償却費仕訳。(例を分かりやすくするために直接建物の金額を減額しています。)
土地と違って建物はその価値が年数経過で減少していきます。
住居用の木造建物の耐用年数は22年。(国税庁HP)
住宅ローンが35年継続するのに、22年後には建物の価値が0円になって土地とローンだけ残るという構図ですね。
これは辛い
⑥10年経過後の貸借対照表
借入金の返済と建物の減価償却を10年続けた後の貸借対照表です。
土地建物の合計残高が3,409万円に対して借入金の残高が3,747万円。
既にバランスしておりません。早くも大損ですね。
⑦10年経過後に持家を売却する場合
こちらが10年経過時点で持家を売却する場合の仕訳です。
土地は取得価格である1,500万円、建物は一般的な市場評価額(取得価格の45%)で売れたものと考えます。
一般的な市場評価額とは、帳簿価額とは異なるもので、建物の資産価値が経年でどれだけ減少したか計算したものです。
こちらの表によると、新築戸建の資産価値の減少は減価償却よりも早く、10年経過で約45%と、購入時の半額以下になるようです。
なので、土地が10年前の取得価格通りで売れたとしても、建物が取得価格の45%で売却となった場合、建物売却損が334万円も出てしまうのです。
⑧借入金の返済仕訳
では土地建物の売却代金で住宅ローンの残額を返済しましょう。
3,075万円の借入金の早期返済ですね。
しかし、10年経過時の借入金残高は3,747万円。
残念ながら全額の返済は出来ず、住宅を売却したのに672万円の借入金だけが残ってしまいました。
しかも334万円の建物売却損も発生しています。
持家は資産か?負債か?
名著「金持ち父さん、貧乏父さん」によると、
資産とは、自分のポケットにお金を入れてくれるもの
負債とは、自分のポケットからお金をとっていくもの
と明確な定義がされています。
この定義からすると、今回の例では持家は残念ながら「負債」となってしまいました。
持家を資産とするにはどうすれば良いか?
では持家を資産とするにはどうすれば良いのでしょうか?
資産価値のある家(土地)に住むこと
「資産価値のある家(土地)に住むこと」です。
先ほどの例では建物の資産価値が10年で半分以上減少してしまいましたが、資産価値が減少し辛い、または上昇する家(土地)に住むことで、建物・土地売却益を生む(資産となる)可能性があります。
資産価値が減少し辛い家(土地)とは、駅近物件(徒歩5分以内)とか、15年以上経過した中古マンションとかですね。
これらは、「自分のポケットにお金を入れてくれるもの」すなわち資産となり得る可能性がある物件です。
逆に、それ以外の多くの場合は持家は負債となります。
なので、資産性を求めて住宅を購入するのであれば、物件の見極めが必須ということですね。
おわりに
本日は持家に関する仕訳を使って、持家が資産か、負債かを考えてみました。
多くの場合で持家は負債となりますが、資産になる場合もあります。
また、持家を取得すると賃貸にはないメリットも存在します。
例えば、月々のローン返済額が家賃と同程度でも持家の方が住居のグレードは間違いなく上がります。
それにより、生活の質を向上させることが出来ます。
このように、持家検討時は損か得かという観点だけでなく、多面的な観点で検討いただければ幸いです。
ありがとうございました。
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